2011年09月08日

Dream Theater/"A Dramatic Turn Of Events"

ア・ドラマティック・ターン・オヴ・イヴェンツ
Dream Theaterの11作目。

マイク・ポートノイの脱退がここまで顕著な変化に寄与するとは。思い知らされた。

たまにマイキーが機械的であったり教則的なドラミングで面白くないという意見がある。確かに定格と言えるテクニックがステレオタイプとして捉えられる一面はあるが、出たがりな面の方がより強い。その意識ゆえ、DTという自ら突き詰めたバンド・カラーに逆に縛られていた事はあったかもしれない。実際他のプロジェクト、ゲスト・プレイで見せるプレイは、DTでの彼と比べるに柔軟でリーズナブルなもの。今回の出来事はバンド、ドラマー双方に何らか音楽的な解放をもたらすはずだ。

今回のDTの新譜に彼は居ない。だから最初に取り上げておいた。

新ドラマー選びが一大イベントと化したバンド。

ドラマーが誰かでここまで盛り上がるのなんて、これまではLed Zeppelinぐらいだったけどね。

オーディションの結果、ジェイムス・ラブリエMullmuzzlerで名前を見かけていたマイク・マンジーニの参加が決定。ジェイムスとは同い年、誕生日も割と近い。彼がDTでどんなプレイを見せるかも話題ではあるが、DTがマイキー抜きでどんな音を作るかの方がより重要だった。

先行シングル"On The Backs Of Angels"発表。

ミドルテンポの歌メロこそ大別するなら"Pull Me Under"系統だが、対比するようなインスト部のアクロバティックさは、近年の楽曲傾向に重なる。前作の楽曲のヴァリエーションのようで、「あり得る」曲だ。確かにドラムワークを確認すると、ここならマイキーのあのフィルというところでその不在を感じるが。この曲だけでは本作推移への全容は掴めない。

前作から2年、これまでの制作スパンを崩すことなくNew Album"A Dramatic Turn Of Events"は完成した。これは残ったメンバーが望んだ事であり、熱心なファンにとっては複雑かもしれない。

お約束の日本先行発売。しかし時代は変わってダウンロード販売の方が早く、iTunes Storeでは'11.08.25がリリース日となっている。

Hugh Symeのカヴァー・アートが今までにないと思える程シンプルで大胆な構図だが、爽やかに高揚を抱かせる。前作ジャケット、暗がりの部屋の扉から覗く青空は、本作に繋がってると考えるとわくわくしちゃうよね!CDのレーベルもおっと思わせるものが。

リードトラック"On The Backs Of Angels"に続く2."Build Me Up, Break Me Down" 。よりヘヴィ&モダンな感触の歌メインだが、この曲が実にDTらしい音の塊。前曲と通して繋ぎの意味も持つ。

そしてこのアルバムを評価するのに適した3曲目"Lost Not Forgotten"

ジョーダン・ルーデスのらしいクラシカルなタッチのピアノから、高速ユニゾンの超絶フレーズも飛び出す。転調の多さも目立ち、後半から突入する3+3+4+4+3+4+4(仮)の拍子に各パートが細分され交互に刻む様は解りにくくも壮観。

そしてこの曲で確信するのが、音のクリアさ、分離の良さ。特に全前作あたりで雑味が過多になった覚えがあるが、これを払拭するサウンドへの取り組みが明らかになってくる。

前回の秘密結社に続き、今度はシャーマニズム?5."Bridges In The Sky"

シャーマンのチャントから導かれるヘヴィなリフは、"Octavarium"期以降のフィーリング再び。既視感は強い、この為か彼らのスタンダードと言えるアレンジに聴こえる。その分、一音づつを追うのが気持ちの良い楽曲に。

6."Outcry"
ちょいダークな雰囲気でもって、"Train Of Thought"のサウンドに似る。各パートが食い下がるように掛け合うテクニカル・アンサンブルがひたすら続き、聴き応えでは作中一か。ピロピロ系のユニゾンもあるよ。

8."Breaking All Illusions"
久しぶりにイントロがワクワクする曲が出てきた。

オルガンをバックにしたギター・ソロなどシンフォニック・ロック然とした音が連なる。
そしてシンセ・ソロが抜群にいい、低速・中速の切り替えでユニゾン〜ギター・ソロまでのバトンタッチを緊張感保ちつつスムーズに実行。

この曲、実にひさしぶりのジョン・マイアング作詞!彼の歌詞は観念性が強いが、その分意外に親しみやすい。ライナーによると詩の形態で書いているそうで、妙に納得。今回はジョン・ペトルーシが歌の形へと編集したそう。

ちなみに彼がこれまで作詞を担当した曲は、
"Learning To Live"
"Lifting Shadows Off A Dream"
"Trial Of Tears"
"Fatal Tragedy"
マイアング作詞は外れなしの法則。

前作だと唯一だった"Wither"格の歌もの小品といえる曲が散りばめられているのも、印象深い。3."This Is The Life"を聴くと"Wither"の時の半端なポップス臭は無くなり一安心。もう2曲がドラムレスというのも、本作故か。ピアノとストリングス・アレンジの7."Far From Heaven"は上品、9."Beneath The Surface"は柔らかなギターの爪弾きに休日のまどろみを感じ、太いシンセ・サウンドが挿入される場面はYesの"And You And I"を想起した。

単独プロデューサーも務めたジョン・ペトルーシが中心となり、ジョーダン、ジョン・マイアングが加わって各曲がクリエイトされている。また2、3、7曲目ではジェイムス・ラブリエもソングライティングにクレジットされるなど。

件のマイクだが、本レコーディングにおいては不足ない仕事をしている。

他のメンバーがプログラミングで打ち込みレコーディングを進めたとあって、プレイヤーとしての個性を発揮する場面は少なかったようだ。 また今のバンドが目指すサウンドの為か、ミックスによりドラムが引っ込んでしまってるのは覆られない。その分今後のライヴで真価が問われるところ。

徹底的にクセを抜いてきた。クリアーなサウンドでのレコーディングを軸に作編曲からコントロールした結果、スピーカーから聴こえてくる音にも結実している。その分近年持ち味としていた乾いたダークさだとかの雰囲気は犠牲にしている。

また通してでは聴きどころを散りばめた作用として、一聴してこれという曲が挙げにくいのもある。そこはジャケット・コンセプトにも共通する曲芸バランスというか、今回スタッフを含め危なげの無いプロフェッショナルな仕事を感じる。

メタル要素も少なめという事で、"Falling Into Infinity"あたり思い起こす場面も多い。

未だに危なげもなく綱渡りしている音楽がこのDTなのだろう。


DVDには新ドラマー・オーディションのドキュメンタリーを収録 。全7名の候補者のオーディション風景とインタビューが記録されている。それじゃあ選任されたマイク以外は晒されてるようなものじゃないか、というとそんな事は無かった。DTとの交流を通して、彼らにとっても良いプロモーションになるだろう映像。ドラマーという人種に何だか好感が持てる、かなりリアルなドキュメントとなっている。

特に現U.K.でもお馴染み、マルコ・ミネマン。マイクとともに最終候補2名に残り、DTメンバーから称賛を受けていた。クレバーな印象の腕の確かさとともに、彼ならではの笑顔でのプレイがやたら好評価を得てたのには、彼を知らなかった層にも浸透するのでは。
ラベル:新譜 Dream Theater US
posted by へいずん at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | New | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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