2011年03月22日

ZABADAK/『ひと』

「ひと」
「そしてみんないきぬくひと」



ZABADAK(以下ザバ)、『平行世界』以来2年ぶりの新作。

奇しくも東北地方太平洋沖地震が起きたすぐ後にリリースされることになった『ひと』

現実では未曾有の災害の連鎖によって日本人、ひいては人間の行動・感情が改めてピックアップ・浮き彫りにされたわけだが。この作品で提示されているのは、ひとをプライベートな視点まで落し込んで表現しているものと解釈した。


変化(!?)として、約18年ぶりにメンバーが増えたことが。

吉良和彦
小峰公子←New!

ってのれんわけ以降の制作体制に特に変わりは無しじゃん!
内縁と婚姻の違いみたいなもんでしょうかね。

ファンタジックな題材の多かった前2作に比べると、より物事を直視したテーマになったよう。状況であったり境遇であったり、誰もが重なるようなそんな人間的なテーマ。


はじまりから骨太の吉良ロックが展開される「つまさきから向こう側」。9曲目に収録の「月と金星」も同様、世界・宇宙への視点を感じさせる。

「無限の中のどのあたり」
いきなりのリコーダーにすごいわくわく。往年の「二月の丘」を想像したけど、こちらはかなりロック基調。がしかし間奏部ごとに必殺リコーダー。

小峰さんがボーカルをとった「Birthday」はプリミティヴなリズムと、ティン・ホイッスルが咽ぶ桃源の世界が映る。サビが出色の出来でふと口ずさみたくなる。

タイトル・トラック「ひと」。主題からして「にじ・そら・ほし・せかい」みたいな透明感ある感じかと思ったら、ゴッリゴリのロック・ナンバーでした。芯の太いオーガニックなサウンド、ブリティッシュ・ハードげなギターには『SIGNAL』の音を思い出す。

「Airport」は別れの歌。確かに空港って別れと再会の季語かも。中期あたりのセンチメンタルな楽曲にも近い。

ひさしぶりに斎藤ネコ氏(vl.)が客演の「四月の風」はインスト。春といえどまだ肌寒さの残る風のような、クールな情景が切り取られておりトラディッショナル色豊か。トラッドであるとフィドルの奏法でも合いそうだが、ここではヴァイオリンはクラシカルな音色をたっぷり聴かせる。

出会いを遺伝子レベルから拡大投影した「ひとつの事件」。こちらも「Birthday」と同じくメジャー感のあるサビを持つJロックとなっている。もしかしたら今作で一番好きかも知れない、これは是非TOKIOあたりに楽曲提供すべき。

「冷たい夜に」
正直ね、小峰さんの声はピアノ曲には合わないと思ったの。民族楽器の編成で馴染みを見せる力強い声をしているからね。そんな事を考えながら聴く前半部だが、後半ではその力強さに呑まれる。詩の説得力ある協調的な歌い方、しっとりとさせた終わりは子守唄につながるものが。そして歌詞が、まるで被災者を描いたようで、そちらにまで思い馳せる事となる。

ザバでおなじみの「水の」シリーズ最新作(?)、「水の行方」。およそ4つのパートに分けられる12分に及ぶサウンドスケープ。『十二月の午後〜』以降の流れを汲むインストゥルメンタルから、途中チェンバロの音を絡めるのは珍しいか。ここまでの3拍子に分割されたリズム・パターンが加わりロックの躍動に移る。中間からまたはじまる唄、前作の「樹海 -umi-」でも見られた祝詞に導かれる世界。ボーカル・パートからつながるのは反復する7拍子の幽玄フレーズで、ここ一番のプログレ。ギターもヘヴィなマイク・オールドフィールドというべきか、まさにザバ版「呪文」

そしてアコースティックな小品「おかえり」でひとは迎えられ、平穏に戻ってきたような落ち着きを持って終える。


近作で音の厚みがすごく増して聴き応えが更に出た、反面うるささに感じてしまうのもあり昔のファンにも薦められるかというと難しいところだが。2000年以降の音が好きであれば、期待に応える力作となっている。


キャッチコピーとして詩から抜粋されたのが、「そしてみんないきぬくひと」

もちろん出来ていた曲から決められたものだが、特定の人々へのメッセージも込められたようだ。
posted by へいずん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | New | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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